目標1nmプロセス!「トイレ王」TOTO、800億円を投じて半導体材料に賭ける
衛生陶器から事業を始めた日本のTOTOは、AIチップブームを背景に、静かに企業のアイデンティティ転換を遂げつつあります。
TOTOは今後5年間で800億円(約49.5億米ドル)を投じ、半導体材料事業の規模拡大を計画しており、次世代の1ナノメートルプロセス向けAIチップ製造を強力に支えることを目指しています。この投資額は、同社の主力である衛生設備事業を大きく上回っており、経営戦略の重心が根本的に転換しつつあることを示しています。
AIチップ需要の爆発的な増加により、TOTOの半導体関連事業は主要な利益エンジンに成長しました。今年3月までの会計年度では、新規分野事業(半導体材料を含む)の売上高が前年比34%増の674億円、営業利益は42%増の289億円となり、同分野の利益が全体利益の半分以上を占めています。これは、同社を象徴する衛生陶器事業をはるかに上回る数字です。
今回の増産計画は、TOTOがグローバルな先端チップサプライチェーンの中核領域に深く参画し、台湾TSMCなどトップクラスのファウンドリの技術ロードマップと直接リンクすることを意味します。
1ナノメートルを狙い、現行プロセスを数世代先行
TOTOの神奈川県にある研究開発施設では、1ナノメートル級のロジック半導体製造を支える技術開発にリソースを集中させています。この目標は、現時点の量産レベルに比べて数世代先を行くものです。
参考までに、世界最大のファウンドリTSMCの現在の量産最先端プロセスは2ナノメートルです。ロジック半導体では、配線幅が狭くなるほどチップ性能が高まります。TOTOが1ナノメートルプロセスを狙うのは、次世代製造に必要な材料基盤を先行して構築する意図があります。
生産拡大の拠点となるのは、日本南西部の九州地方です。TOTOは大分県と福岡県の2カ所の工場に最新設備を導入し、生産能力を増強します。現在両工場ともフル稼働しており、福岡県の工場で新設する焼成工場は来年1月竣工予定です。
資金面では、TOTOは2030年3月期までに総額800億円の投資を計画しており、そのうち390億円は既に実行が決定されています。残りについては市場需要に応じて進められ、稼働後も需要が供給を上回る場合は、さらに新たな工場建設も検討します。
陶器焼成技術:トイレからウェーハ静電チャックへの越境論理
TOTOが半導体材料事業へ進出したのは偶然ではありません。1980年代には、同社は衛生陶器で培った焼成技術を半導体分野へと応用。主力製品である静電チャック(チップ製造工程でウェーハを固定する装置)は、高純度セラミック技術による高い耐久性を誇り、同社技術の堀となっています。さらに、TOTOはエアロゾルデポジション法(微細セラミック粒子を直接吹き付けてコーティングを形成する技術)にも独自性を持ち、さまざまな半導体製造プロセスで展開しています。
とはいえ、この事業は順風満帆であったわけではありません。長年赤字が続きましたが、2020年前後からAI半導体の需要が急増し事業は大きく転機を迎え、ついには主力の衛生事業を凌駕して利益の最大源となりました。新領域事業の売上比率はTOTO全体の1割程度に留まるものの、その収益力は伝統的な衛生設備事業を大きく上回っています。
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